放送研究と調査(月報) - 目次

各国の「放送界の動き」に関する情報を掲載しています。

放送界の動き

中国,独自の地上デジタルテレビ規格決定

中国政府は8月30日,地上デジタルテレビの規格として,「GB20600-2006」という独自の方式を採用すると発表した。中国はこれまで衛星やケーブルのデジタル化にあたっては,ヨーロッパのDVB 方式を受け入れたが,地上波については独自の規格を採用する方針で2001年から開発を進めていた。この中国独自方式は,DVB 方式を改良した清華大学の「DMB-T」と,アメリカのATSC 方式を改良した上海交通大学の「ADTB-T」を折衷した内容とされる。中国では上海・北京など多くの都市で,すでにバスなどの移動体向け地上デジタル放送にDVB 方式を導入しているが,こうした移動体向け放送の事業者は1年以内に規格を変更するよう求められることになる。

中国,外国アニメ番組の放送を制限

中国の国家ラジオ映画テレビ総局は,午後5時から8時までの間,子ども向け外国アニメ番組の放送を禁止する措置を9月1日から導入した。中国では1981 年に日本のアニメ『鉄腕アトム』が外国のアニメとして初めて放送されて以来,『ドラえもん』『スラムダンク』など主に日本のアニメが人気を博したが,中国政府は外国のアニメには暴力シーンがしばしば見られる問題や,国産アニメの振興の必要性をあげ,これまでも外国のアニメの規制を行ってきた。今回の規制について中国中央テレビや北京テレビなどは歓迎の意向を示しているが,国産のアニメは視聴率や広告の効果などが外国のものと比べて30%から40%落ちると言われており,関係者は政府が補助金を出すなどして立ち遅れたアニメ産業の振興を図るよう要望している。

台湾,政治討論番組で暴力事件

台湾で8月24日,テレビの政治討論番組の生放送中に,出席者が討論相手を殴って鼻の骨を折るけがをさせる事件が起き,番組放送のあり方が様々な批判を呼んでいる。この事件は「全民テレビ」の政治討論番組『頭家来開講』で,林正杰元立法委員が,自分の発言に評論家の金恆偉氏が口を挟んだとして激高し,生放送の最中にいきなり金氏に殴りかかったものである。しかし番組の司会者はけがをした金氏が退場した後も林元立法委員の発言を認めた他,全民・中天・三立などのテレビ局は暴行の瞬間の映像を繰り返し放送したため,有識者から強い非難を浴びた。台湾では,以前から各テレビ局がゴールデンタイムに放送枠を設けるなど,政治討論番組は広く人気を集めているが,中国との統一か台湾独立かといった二極対立を煽る傾向があるとして,番組を批判する意見も多い。

韓国,MICと放送委がIPTVの共同推進に合意

韓国で通信を所管する情報通信部(MIC)と放送を所管する放送委員会は,8月16 日,IPTV試験事業を年内に共同で推進することで合意した。この合意により,通信と放送の領域をめぐる両組織の縄張り争いや法制度の不備,関連業界の意見対立などで遅れていたIPTV 事業の開始に目処が立ち,放送と通信の融合サービスに弾みがつくと期待されている。放送委員会によれば,今年9月から10月に通信・放送事業者が共同で参加するコンソーシアムを構成,11月か12月にIPTV の試験サービスを実施する,としている。韓国では2003年末から通信事業者等がIPTV 事業を推進しており,最大の固定通信事業者コリア・テレコム(KT)はすでにIPTV システムの構築を完了,ハナロ・テレコムは,7月24日,ビデオ・オン・デマンドのテレビ・ポータルサービス「ハナTV」を開始している。

インド,Tata Skyが直接衛星放送サービス開始

世界メディア界の実力者ルパート・マードック氏が所有するSTAR グループとインドの財閥Tata の合弁Tata Sky が,8月8日, インド第3(有料放送としては第2)の直接受信衛星放送Tata Skyの本放送を開始した。視聴にはSTB やアンテナなどの購入費と架設費合わせて3,999ルピー(1 万円強)の初期費用と月額200ルピー(530円程度)の視聴料金が必要である。本放送開始時の提供チャンネル数は55で,ライバルであるZee- Turner 系のチャンネルは含まれていない。本放送開始時のサービスエリアは300都市だが,3か月以内にインド全土に拡大する計画である。