バーベルにかかる重圧。自らの限界に挑む者だけが栄冠を勝ち取る
競技紹介アニメーション「One Minute, One Sport」
ウエイトリフティングのルールや見どころを1分間の手書きアニメーション動画でご紹介します。ウエイトリフティングに詳しい人も、そうでない人も、まずは動画をチェック!
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競技概要
両手でバーベルを握り、一気に頭上まで持ち上げて立ち上がる「スナッチ」。プラットフォーム(床)からいったん鎖骨の位置までバーベルを持ち上げ(クリーン)、次の動作で頭上に差し上げる(ジャーク)「クリーン&ジャーク」。これらをそれぞれ3回ずつ行い、それぞれの最高重量の合計を競うのがウエイトリフティングだ。
ウエイトリフティングの原型は、重い石などを持ち上げる力比べ。古代より世界の多くの地域で行われてきた。オリンピックでの歴史も古く、第1回アテネ1896大会から実施されていた。ただし、アテネ1896大会、セントルイス1904大会ではウエイトリフティングは現在と異なるテクニックで実施され、両手で持ち上げる種目のほか片手のみで持ち上げる種目があり、体重別の階級もなかった。アントワープ1920大会から体重別の階級が設定され、モントリオール1976大会から現在のスナッチとクリーン&ジャークの2種目に整理された。シドニー2000大会からは女子種目も登場した。
種目
男子
- 61kg級
- 67kg級
- 73kg級
- 81kg級
- 96kg級
- 109kg級
- 109kg超級
女子
- 49kg級
- 55kg級
- 59kg級
- 64kg級
- 76kg級
- 87kg級
- 87kg超級
競技の魅力、見どころを紹介
一瞬、一瞬に競技人生をかける選手たち。精神と肉体の融合が生み出す驚異のパワー
一見シンプルに見えるウエイトリフティングだが、肉体的にも、精神的にも非常に過酷な競技。まず、自分の体重の2倍以上にもなるバーベルを、一瞬で床から頭上まで持ち上げるという行為を想像してみてほしい。体中の筋肉をただ総動員するだけでは、到底無理だと見当がつくだろう。そこに必要なのは、全身に行き渡る集中力と精神統一、そしてスピード、気合。これらが全て最高の状態で組み合わさったときに一瞬の爆発力が生まれる。選手たちは日々、鍛錬を積み重ねながら、記録を伸ばすべく努力しているのだ。
競技の進め方にも、実は細かいルールがある。まず、選手は名前が呼ばれてから基本的に1分以内に試技を行わなければならない。連続で試技を行う場合でも与えられるのは2分間である。短時間のうちに心と体の状態を整える必要があるが、少しでも焦ってしまえば呼吸が合わずに失敗する。たとえ時間ぎりぎりになっても落ち着き払い、自分にとって最高のタイミングでバーベルに挑むことで好記録が生まれる。
また、バーベルを持ち上げる時に両足の足裏以外、例えばお尻がプラットフォームに触れてはならない。少しでも触れてしまえば、失敗の試技として判定される。
バーベルを持ち上げる間に肘の曲げ伸ばしがあってはならず、左右の腕の伸び方に不均衡があってはならない。持ち上げている間、バーベルをうまくコントロールできずにプラットフォームの外に足を踏み出すことがあれば失敗となる。バーベルを持ち上げた後、両足を結ぶ線と胴体とバーが平行になった状態でレフリーが合図をするまで静止していなければならず、合図より前にバーベルを降ろしてしまえば失敗として判定される。
前半のスナッチで3回とも失敗した場合は失格となり、クリーン&ジャークに進むことができない。
重いバーベルを頭上に差し上げ、顔を紅潮させて静止する選手たちの姿は1ミリの乱れもなく美しい。そして求める記録を出した時、喜びを全身から放ち、笑顔を弾けさせる選手たちの姿がまた、観客の感動を呼ぶのだ。
東京2020大会に向けた展望
東欧・中欧・アジア勢のメダル争いを崩せる新たな勢力は出現するか
リオデジャネイロ2016大会での実施階級は男子8階級、女子7階級であった。国際ウエイトリフティング連盟は2018年11月1日より男女ともに全く新しい10階級ずつを適用するべくルールを変更し、それらの中から東京2020大会では男女ともに7階級ずつが実施される。
オリンピックの歴代国別メダル獲得数では、ロシアと中国が他国を大きく引き離す数を誇っている。中国は21世紀に入ってからが特に強く、男子69kg級ではアテネ2004大会からリオデジャネイロ2016大会まで4連覇を果たした。女子は中国の強さが男子よりも顕著で、リオデジャネイロ2016大会では7階級中3階級を制している。その他の国では、アメリカが20世紀前半までは存在感を見せていたものの、近年での金メダルはシドニー2000大会の女子48kg級のみ。しかしこれは女子ウエイトリフティング史上初のメダルとして歴史に刻まれている。
イランや北朝鮮などのアジア勢や、ヨーロッパ諸国の選手たちが活躍する競技でもある。リオデジャネイロ2016大会では、男子の最重量級である+105kg級でラシャ・タラハゼ(ジョージア)がスナッチ215キロ、ジャーク258キロを挙げ、トータルで世界新記録の473キロをマークして金メダルを獲得。リオデジャネイロ2016大会時22歳だったタラハゼは、東京2020大会も狙う。スペインのリディア・ヴァレンティン・ペレスはリオ2016大会75kg級で3位となり、北京2008大会の銀、ロンドン2012大会の金に加えてすべての色のメダルをそろえたことになる。東京2020大会でははたして何色のメダルを追加するか、楽しみなところだ。
<日本>
ローマ1960大会からロサンゼルス1984大会までの間で、日本勢はフェザー級(現62kg級)三宅義信の連覇を筆頭に、合計12個のメダルを獲得して存在感を発揮した。
その後長らくメダルは途絶えたが、ロンドン2012大会で三宅義信の姪にあたる三宅宏実が女子48kg級で銀メダルを獲得し、リオデジャネイロ2016大会でも銅メダルに輝いた。
リオデジャネイロ2016大会では、男子でも糸数陽一が62kg級で4位に入っており、きたる東京2020大会ではメダル獲得が期待されている。同大会に20歳で初出場した女子53kg級の八木かなえと女子58kg級で5位入賞した安藤美希子も才能あふれる有望選手である。
日本選手がオリンピックのメダル争いに常時食い込む時代が、再びやってきている。
トリビア
片手でバーベルを上げた。
この時代、ウエイトリフティングは現在と異なる方法で競技が実施され、現在のような両手でバーベルを上げる種目のほかに、片手でバーベルを上げる種目が存在していた。
(2020年3月24日現在)