おしゃれの楽しさも、年を重ねる希望も。大草直子さんが新雑誌でつくる“居場所”

『AMARC magazine』

雑誌の休刊が止まらない。コロナショックで流れが加速してしまい、2020年は100タイトル以上の雑誌が休刊、今年も各社が相次ぎ、休刊を発表しました。学生時代から、いくつもの雑誌に夢中になり、たくさんの興味関心を育ててもらってきた私は、休刊のニュースを耳にするたび、何とも言えない寂しい気持ちに。そんななか今秋、人気スタイリストの大草直子さんが女性誌を創刊されると聞いて、とても元気をもらいました。

『AMARC』は、“今を生きる女性をラクに楽しく”をモットーに、大草さんが2年前に立ち上げられた個人ウェブメディア。雑誌化は当初からの夢だったそうです。販路が限られていたことに加え、大草さんのTV出演もあったことで注目が高まり、私たちのお店では入荷分が2度完売するほど人気に。版元の増刷によって、最近、ようやく再々入荷がかないました。

手に取ったときの紙の質感、記憶に残るビジュアル、心に響く言葉の数々……大草さんの細部にわたるこだわりや熱い思いを感じ取りながら、じっくり楽しませていただきました。根底にあるのは「おしゃれの軸を自分に取り戻そう！（比較することを手放す、頑張っている自分を認める、今もっているものに感謝する）」という、ウェブメディアから貫かれているメッセージ。巻頭のファッション特集や、「MADISONBLUE」ディレクター・中山まりこさんのインタビューをはじめ、誌面を通して描かれている、スタイルを持った大人の女性像が本当にカッコよく、こんな風に年を重ねていけたら素敵だなと思わずにはいられませんでした。

クイックなＱ＆Ａではなく、「ディープな気づき」を

雑誌が厳しい時代に、どうして雑誌を出したのか。『AMARC magazine』発売日前夜のインスタライブで、大草さんが語られていたことを聞き、心から応援したくなりました。

「私自身が雑誌世代で、雑誌にたくさんのことを教えてもらったし、導いてもらったし、気付かせてもらったし、工夫するヒントをもらったというのがすごく実感としてあります。そして一番大きいのは、居場所をもらったところ。居場所をもらえたというのが、私が雑誌を愛する大きな理由なんです。例えば『Vingtaine』を読んでいたときに、たくさんの服や予算がなくても、工夫でおしゃれを楽しむことができると思えた。『Grazia』には、大人になることがなんと豊かで美しいことかという希望と未来を見させてもらった。そこに女としての居場所が見つかった、すごく安心できる場所だった。なので、そういう居場所をつくりたいという思いから雑誌の発刊に至りました」

また、さまざまなメディアを実際に手掛けてみて、ウェブやSNSで紹介できる答えと、雑誌で提案できる考え方は、全く違うということに気付いたことも大きいそう。大草さんいわく、「雑誌の良さは、間違いなく、写真の強さと文字の力」「（普段手掛けているウェブやSNSとは）もう少し違うアプローチでの考え方、工夫のしようを、雑誌という、触れるもの、思い返せるもの、読み返せるもの、スクラッピングできるもの、行間にメッセージが漂うものでご紹介したいというのが大きなきっかけ」だったと言います。

大草さんに直接、お目にかかったことはありませんが、TVやインスタライブを拝見し、なんて明るく、笑顔が素敵で、ポジティブな気にあふれた太陽のような方なのだろうと思います。『AMARC』のウェブや雑誌でトップに書かれているメッセージは、「LIVE, LOVE, LAUGH」。「毎日を一生懸命生きて、心から笑い、近くにいる人や自分を精一杯愛しぬこう」という意味を込めているという大草さん。ご自身がまさに体現されているからこそ、説得力があり、これほどみんなを引きつけるのでしょう。次号の発売も、既に計画されているとのこと。どんな一石を投じてくださるのか、今から楽しみでなりません。