「聞き方」を変えるだけで、仕事や人間関係が劇的によくなる理由
何を変えれば、これまでとは違った一歩を踏み出すことができるのだろうか。仕事、趣味、人間関係? 何から手をつけていいか分からないなら、「言葉」を変えてみるのはどうだろう。30年を超える年月、出版界という言葉の海の中を泳ぎ続けてきた『「話し方のベストセラー100冊」のポイントを1冊にまとめてみた。』の共著者・藤吉豊氏と、小学生から80代まで、相談者2000人待ちという大愚元勝和尚による対談。後編は、「会話で一番大切な聞き方」について。新年の今こそ、お坊さんと「言葉の力」を考えます。 【関連画像】藤吉豊氏(左)と大愚元勝和尚(福厳寺本堂にて) <前編から読む> ●話し方のルール第1位は、「聞き方」。会話は「相手」があってこそ 大愚元勝和尚(以下、大愚和尚):藤吉さんが書かれた『「話し方のベストセラー100冊」のポイントを1冊にまとめてみた。』では、話す上で重要なポイントの統計を取ってランキングで紹介していますが、その1位が「聞き方」だという結果が出たときには、どんな思いがありましたか? 藤吉豊(以下、藤吉):驚きました。「話し方の本なのに、聞き方が1位なの?」とツッコミが入るのではないかと(笑)、心配もしました。 ただ事実として、100冊中の70冊に、「聞くことの大切さ」が書かれてあったんです。会話には相手が必ずいますから、「自分の話したい内容を話すこと以上に、相手の話したい内容を聞く」ほうが大事なのだと思います。 大愚和尚:70冊ですか。 藤吉:はい。要するに会話で大切なのは、「相手を中心に考える」ことなんですね。 「聞く」ときだけでなく、自分が話をするときも、相手を中心に考える。例えば、話し方のプロの多くが、「言葉の選び方」にも触れていました。 取材をしていると、当たり前のように専門用語やカタカナ用語が出てくることがあります。その人の業界、身内であれば当たり前に伝わることであっても、外部の人には意味が分からない。会話の中に一つでも意味が分からない言葉が挟まれると、それ以降の理解が及ばなくなってしまいます。伝える側としてはまず、自分が日常的に使っている言葉が、果たして相手に伝わるか、ということを考える必要があります。「自分が知っているのだから、相手も知っているはず」という思い込みを捨てた上で言葉を選ばないと、本当の意味で相手に理解してもらうことはできません。 大愚和尚:お釈迦様は教えを説くのに、「決して人々が分からない言葉で語ってはならない」としました。35歳で悟りを開かれてから、80歳で亡くなられるまでの間、ずっと人々の苦しみを聞いてアドバイスをなさった。その際お釈迦様は、自分が話している相手の能力、育った環境や背景を見越した上で、その人に伝わるような例え話を出したり、伝わるような順番を考えたりして、お話をされたといいます。画一的なお説法をしたわけではないんですね。これを「対機説法(たいきせっぽう)*1」というのですが、相手を見て、自分の伝えたいことを伝える。これがお釈迦様のお説法なんです。 *1 対機説法:相手の資質に合わせ、理解ができるように教えを説くこと。