医療機器「1本使えば対価1万円」…選定や使用巡り170万円贈収賄容疑 がん研元医長と販売会社前社長逮捕

2023年9月21日 18時09分
 特定の医療機器を優先的に使った見返りに現金約170万円を受け取ったとして、警視庁捜査2課は21日、収賄容疑で国立がん研究センター東病院(千葉県柏市)元医長で米フロリダ大准教授の橋本裕輔容疑者(47)=米国在住=を、贈賄容疑で医療機器メーカー「ゼオンメディカル」(東京・丸の内)前社長の柳田昇容疑者(67)を、それぞれ逮捕した。

警視庁

 逮捕容疑では、橋本容疑者は国立がん研東病院肝胆すい内科の医長を務めていた2021年5月、ゼオン社の医療機器「ステント」を使った見返りに、現金170万円を自身の口座に振り込ませて受け取ったとされる。捜査2課は2人の認否を明らかにしていない。
 同課によると、橋本容疑者は19年4月~21年7月に医長を務め、同科で使う医療機器を選ぶ権限があった。
 ステントは胆管に挿入して胆汁の流れを良くする筒状の医療機器で、同科では橋本容疑者が19年4月に医長に就任してからゼオン社製を使うようになった。
 橋本容疑者は21年9月からフロリダ大に移り、現在はジャクソンビル校消化器内科の准教授。8月に一時帰国し、警視庁が任意で事情聴取していた。国立がん研究センターの職員は「みなし公務員」にあたる。
 センターは元医長の逮捕を受け、「誠に遺憾で深くおわび申し上げる」とのコメントを出した。
 ゼオン社は化学メーカー「日本ゼオン」(東京・丸の内)の子会社。循環器や消化器に関する医療機器の製造販売をしている。

◆医長就任と同時に機器採用、退任後は激減

 ステントを1本使ってもらえば、対価として1万円を支払う—。警視庁捜査2課によると、ゼオンメディカル社側は橋本裕輔容疑者にこんな営業文句で、自社のステントを優先的に使ってもらうよう求めたとされる。対価は製品の感想や評価をゼオン社に伝える「市販後調査」の協力費名目だったが、実際に調査をした形跡はなかったという。
 国立がん研究センター東病院の肝胆膵科では、複数のメーカーのステントがストックされており、使った分の代金をメーカー側に支払う仕組みになっていた。
 もともとゼオン社製のステントは使っていなかったが、橋本容疑者の医長就任と同時に扱い始め、同科で使う半数以上をゼオン社製が占めるようになった。橋本容疑者の退任後は、割合が1、2割に激減した。
 橋本容疑者が受け取ったとされる170万円は、2020年度に使った約150本分への対価だったという。捜査幹部は「患者の病状に合わせて最善の医療機器を選んでいたのか」と疑問視する。19年度分の報酬についても捜査を進めるとしている。(佐藤航、浜崎陽介)

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