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「コミックドルフィン」で好評連載中の「Dr.モローのリッチな生活」が連載10年目にしてついに単行本化されることになり、今回はその直撃インタビューをDr.モロー先生と「ドルフィンマン」で悪名高い鬼編集、「ネタになるやろなるやろ?」の担当サイトーさんとでお送りいたしましょう! さて、いかがあいなりますことやら…
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担当編集サイトーさん(以下 鬼 )
ども!サイトーです。うーん、苦節10年…身内と友人と業界中を犠牲に巻き込みながら、ついに単行本になりましたねー。当時私は司書房の編集だったのですが、まさかドルフィンマンに続き、「リッチな生活」まで単行本化になるとは…感無量ですね!
Dr.モロー(以下 モ )
ホゲー。Dr.モローでしゅ。お茶菓子はどこですか。ありませんかそうですか。
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(鬼) すみません、ビンボーなもので…それより今はご自分の単行本でしょ!(汗) 皆さんもイベント歴が長い方は思い当たる節があると思うのですが、私は再読して当時の舞台裏まで思い出し、懐かしさに目が遠くなっちゃいました。思えばあっという間の10年だったような気もしますが、モロー先生はいかがですか?
(モ) そーですねー。……と言っても、そのエピソードそのものは覚えていても、その当時のマンガの舞台裏とかは全然覚えてないんですよ、実は。そもそも私は物事を時系列に沿って記憶するという事が大の苦手なので、同時に起こった事とかはもうさっぱり。例えば愚弟の結婚式だって、マンガに描いた事以外の事はほとんど覚えてないし。
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(鬼) うーん、かなり記憶が怪しいですね…もしかして先生の知らないモロー先生がいて、朝起きると知らないうちに足は泥まみれ、パジャマは血まみれ…とかないでしょうね!? まさか今回の単行本の「2色カラー特別付録」に出てくる深夜脱糞変質者って…??
ちなみに91年はソビエト連邦崩壊や湾岸戦争があった年で、米軍援助のためガソリン税が特別増税され、のちにPKOが検討されるなど世界中が大変な年でした。そしてこの年に生まれたのが長寿連載を誇る先生の「リッチな生活」なのですが、この業界で10年も続く作品はやはり先生の実力があったればこそ成り立っているのではないでしょうか(と業界関係者の尊いネタ犠牲の上に)。
(モ) ふはははは。誤解のないように言っときますが、10年続いた事は実力とかではないです。「周りの犠牲の上に成り立っている」というのは否定しませんが(笑)。いきなり日記マンガを描けと言われ、試行錯誤を繰り返し現在に至るってカンジです。
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(鬼) もしかしてシンクロナイズドスイミングのように、華麗に読者を楽しませるその水面下では、凄い泳力が消費されてということでしょうか? 楽しそうな一面だけでは漫画家の真の姿は見えませんので、マンガを目指す読者の方へマジなアドバイスがありましたらどうぞ。
(モ) 「漫画家目指す読者」にアドバイス出来るほどえらくもないのですが、「10年前の自分」に言ってやりたい事ならあるかな。でも話長くなるからパス。……あ、「漫画家目指す読者」に1つだけアドバイスできる事があった!「そっち系専門学校はやめとけ!」専門学校という場所は「お金がかかるマンガ同好会」。行っても金と時間のムダです。漫画家になりたいと言う人は、下手でもいいからとにかく1本オリジナル漫画を描き上げる事です。これができない人は漫画家にはなれません。「描く気になればいつでも描ける」って思っている人、かなり多いんですよ。根拠のない自信に満ち溢れている人が(笑)。
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(鬼) 私の知り合いに専門学校卒で活躍している作家さんも確かにいます。しかしモローさんがおっしゃられるとおりその方も日々たゆまぬ努力をし、何本も原稿を描いて初めて手にできた栄光であって、例えるなら職業訓練校を出ても100%の就職は保証されないのと同じように、「卒業≒デビュー」の図式はありえません。それどころか死に物狂いで執筆しても、果たして何%の方が幸福を掴めることか…これでも結構シビアな世界なのです。
でもそれだけ苦労して、家族や担当編集様をお笑いネタにしちゃう作家って一体…
(モ) 面白ければそれで良いのです(断言)。漫画家の仕事は、漫画を描く事そのものではなく「娯楽を漫画という形で提供する」事だと思っています。いくら周りに気を使って描いた原稿でも、面白くなければ読者にとっては「ダメな漫画」ですから。面白いと思ったネタと引き換えなら身内や担当のブーイングなんか安いもんです。はっはっは。
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(鬼) はっはっはって…担当編集のオレ様を何だと思ってるんですかぁ!! 代わりに編集長のネタを売りますから、私だけは見逃してくださいよぉ。そしたらネームも素通しにいたしやすゼ ダンナ…へっへっへっ、げびげび。
マジメな話、私も読者が笑って下さるのでしたら編集の一匹や二匹のプライベートなんかフミグリもんと考えております。で、司書房時代に「こりゃ面白い!」ってんでドルフィンマンのネームを通しまくったら、その凶悪ぶりにのちに入社のFOXで「アイアン編集サイトーくん」として有名に…やっぱり自己保身しとけば良かったかなー…(涙)
(モ) 身近な人物や出来事を直接ネタにできる一方、絵日記マンガの欠点として日常生活の中から「笑える部分だけ」抽出しているので、「24時間いつでもああいう生活をしている」と誤解されてしまうという弊害もあります。それも長く続けていると「マンガの中でのキャラクター性」ができてしまうからなんですが……。リッチのエピソードは全て実話ですが、コマ割りのタイミングやネームのリズムでのデフォルメはしているわけです。実話をそのままのリズムでマンガ化しても面白くないですからね。そういう事を繰り返すと「キャラクターが立ってくる」。それが困る人もいるわけです(笑)。なまじマンガに描いてあるエピソードが実話なだけに。
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(鬼) なるほど、しかしモロー先生は先生自体が理路整然としていて、ボケをかます周囲の人々に論理的に突っ込むおかしさがありますが、先生自身「これは自分の大ポカですぅ!」といった爆笑話はございますか? また、Y田さんはいつもあのテンションなのでしょうか?
(モ) 私は忘れっぽいのでポカそのものは多いのですが、特にギャグになるようなポカはないですね……。ただ単に「忘れ物をした」だけじゃマンガにならないですから。逆にY田君に関してはマンガになりそうなエピソードをマンガにしていったらああなっちゃった(笑)。本人は否定してますが、いつも下ネタ連発してるし。
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(鬼) なるほど。モロー先生といいパワフルなY田さんといい、先生は24時間いつでもああいう生活をしているということですね!?
(モ) だから違うっちゅーの!
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(鬼) そんなモロー先生から今回のインタビューの最後にひとこと「Dr.モローのリッチな生活」の宣伝をお願いいたします!
(モ) 人の話を聞けー! せ…宣伝…んー…思い浮かばないよう…。ま、適当にヨロシク。
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(鬼) 先生…これ、オチてないっす……