帽子
帽子(ぼうし)は、防暑、防寒、防砂、装飾を主な目的として頭にかぶる衣類の一種[1]。なお、英語ではつば(ブリム)の有無あるいは位置によってハットとキャップに分けられる。
概要[編集]
一般に布製で、つば(帽子の頭に密着する部分から外に向かって広がる日差し除けとなる部分)の有り無しがある。頭にかぶるものとしては他に冠やターバン、ヘルメット、兜、カツラなどがある。主に頭部の保護やファッションの目的で用いられる。詳しく用途を記すと次のとおりになる。
- ドレスコード・エチケット
- 制服やユニフォームの一部(制帽・軍帽・官帽など)
- 宗教上の戒律
- 通常のファッション、おしゃれとして
- 直射日光による日焼けや熱中症を避ける為の日除け
- 防寒
- 昆虫、衝撃、飛来落下物、危険物、毒劇物などからの頭部保護
- 調理や精密機器の組み立てなどの際に抜けた髪の毛が落ちないようにする
- 髪型の保護
- 禿を隠す
- 顔を隠す
- 商品広告(主にプロスポーツ選手)
- スポーツ(特に野球)の応援
- ジャグリングの道具として
歴史的には特定の頭部の装身具は、その人物の社会での身分を示すこともある。
白いトックブランシェ(仏: Toque blanche、コック帽)[† 1]は、白い上下のシェフの制服(英: Chef's uniform)と共に一目で洋食の料理人と認識されるアイテム[† 2]である。ベレー帽は画家を、麦藁帽は夏や農村を連想させるものである。
今日では特定の帽子を身につけるように求められる状況は限られている。代わって、ファッションとして帽子の必要性が認識されるようになった。特定の被り方や、帽子が所属するサブカルチャーを示す他、擬似的に制服に近い意味合いを持つものもある。一般的に野球帽は特定のチームへの支持を示すものだが、斜め向き、逆向きにかぶるとヒップホップ、ストリートファッションのアイテムとなる。
日本では、明治4年8月9日(1871年9月23日)の散髪脱刀令(いわゆる断髪令)により髷を結う男性が激減し、代わって帽子が急速に普及した[2]。西洋から来た帽子は「シャッポ[† 3]」「シャポー」(仏: chapeau[† 4])などと呼ばれ、「和服にシャッポ」というスタイルで男性に普及した(後に洋服も普及)[2]。
各部の名称[編集]
本体[編集]
- クラウン
- 帽子の山の部分
- 天(天井、トップ)
- クラウンの頭頂部分。
- 腰(サイド)
- クラウンの基部。制帽・軍帽・官帽などでは「鉢巻」と呼ばれることもある。
- ジガミ(マチ、ヨツ)
- 天と腰とをつなぐ部位。4枚の生地を縫い合せて作る。
- 庇(鍔、ブリム)
- 日除け。制帽のうち高位幹部対象の物では樫などの飾りの刺繍が入れられることもある。水兵帽ではこれがない。
付属部[編集]
- 縁(へり)(帯・帽帯・周章)
- 腰の上に巻かれる帯布。ななこ織の布などである。リボンであることもある。これが付かずに腰のままとされることもある。
- 顎紐(あごひも)
- 革製が多いが布製やビニール製、ゴム製などもある。制帽(軍帽・官帽)の顎紐には縞織の金線・銀線が付されることもある。
- 耳章
- 顎紐を腰に留める付属品。主に金属製で、無装飾の場合と、団体の徽章が入る場合がある。
- 帽章
- 主に制帽として用いられる帽子につける徽章。
エチケット[編集]
帽子に関するエチケットは、単純化すると屋外でかぶり、屋内で脱ぐとなる。屋内に入ったときは外套と一緒に帽子を脱ぎ、再び外に出るときに身に着ける。
19世紀から20世紀にかけて、山高帽が紳士の礼装として認識されていた。当時のヨーロッパでは以下のように言われていたという[3]。
もしその人物が家の中に入って来て、帽子を脱ぐようなら真の紳士。
帽子を脱がないのなら紳士のふりをしている男。
そして帽子をかぶっていない人物は、紳士のふりをすることさえあきらめている男。
このエチケットは軍隊のそれに準じており、入隊教育の中で新兵は帽子の取り扱いについて、講義を受ける。軍隊では戦闘中でなければ、屋内だけでなく艦船の中でも脱いでいなくてはならない(逆に旧ドイツ国防軍の様に、上官に対面する時の無帽は軍規違反になる軍隊もある)。また、敬礼の一つとして帽子を取ることがある。
これ以外の状況では、葬式や国歌斉唱、食事などが帽子を脱ぐべき状況である。男性の挨拶として帽子に手を当て軽く前に傾ける・一瞬だけ持ち上げ掲げるという方法がある。女性の場合、帽子は正装の一部と見做されている為この挨拶をする必要は無く(というより絶対帽子は脱いではならず)、小さくお辞儀をする・スカートをつまみ、小さく身を沈める(右脚を引いて屈む)などで十分である。
キリスト教の教会では男性は帽子を取ることが求められるが(女性は帽子を取らないのがエチケット)、シナゴーグでのユダヤ教徒やモスクでのイスラム教徒など帽子を取る必要が無い宗教もあり、帽子に対する態度は様々だが、いずれも神への敬虔さを示すという点で一致している。キリスト教徒が帽子を脱ぐのは膝をつくことや頭を下げることと同じ意味で、神に対する敬虔さからである。
ユダヤ教徒はタルムードにより独特のキッパーをかぶることが決められている。これも唯一神の偉大さ、人の卑小さ矮小さを、被る者に認識させるためである。
種類[編集]
- 赤帽
- 赤帽子(cardinal hat, red hat, scarlet hat)
- 紅白帽
- ベースボールキャップ(野球帽)
- ベイジングキャップ(水泳帽)
- アルペン
- オスロー
- 烏帽子
- 御釜帽
- 角帽
- カッ
- ガレーロ、ガレロ(galero)
- カロッタ
- カミラフカ
- カンカン帽(ボーター、キャノチエ)
- 学生帽
- キャプリーヌ(キャペリン)
- ケピ帽(ドゴール帽)
- 国民帽
- 作業帽
- シュトライメル(shtreimel, Streimel)
- シャブラック(チャープラーグ(shabrack, csáprág))
- スカーフ
- スカルキャップ
- スポディク(spodik)
- ソフト帽(中折れ帽、グロブナー、サメト、サメフート(סמט)、ビーベルフート(イディッシュ語: ביבערהוט, biberhut)、フェドーラ、ミルキー)
- シルクハット(トップハット、チュリンダー(シリンダー))
- オペラハット
- スポーティーソフト帽
- チロリアンハット
- ボルサリーノ
- ホンブルグ・ハット(Homburg, הומבורג, Homburgas, Хомбург, Homburghatt)
- 山高帽(ダービーハット、メローネ)
- キャンペーン・ハット
- 戦車帽
- ソンブレロ
- 角隠し
- ティアラ
- 頭襟
- バイザー
- ハンチング帽(ディアストーカー(deerstalker)、鹿撃ち)
- 日除けハット
- ピスヘルメット(Pith helmet、ソーラ・トーピー(sola topee)、トーピー(topee)、サンヘルメット(sun helmet)、コークヘルメット(cork helmet)、トロピカルヘルメット(Tropical Helmet)、サラコット(salacot)、トーピ(topi)、探検帽、 防暑帽)
- フェズ(fez、トルコ帽(turkish hat)、タルブーシュ(tarboosh))
- ブリム・ハット
- フード
- フリジア帽
- ヘッドドレス
- ベッレッタ、ビレッタ(berretta, biretta)
- ベール帽
- ポークパイ
- ボンネット
- 耳あて(イヤーマフ、耳袋)
- ムナク帽
- ワッチ(ニット帽、ビーニーキャップ)
- ロシア帽(パパーハ、ウシャーンカ、シャープカ、シャープカ・ウシャーンカ、シャープカ・トリウーフ、トリウーフ、マラハーイ)
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キッパー。帽子の部類に入るかは見解が分かれている
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サトマール帽、ホンブルクなど様々なユダヤ的帽子をかぶったレオポルトシュタットのダーティーム
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シュトライムルを被り祈るラビ
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ステットソン・ブランドののフェドーラ
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インディ・ジョーンズ・スタイルのボルサリーノ・フェドーラ
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シルク製のトップ・ハット(シルクハット。シルク製でないものもある)
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救世軍の制帽(ショー・クリフトン大将)
その他[編集]
脚注[編集]
注釈[編集]
出典[編集]
関連項目[編集]
- 笠
- 冠
- 烏帽子
- ターバン
- ヘルメット、兜
- 鬘(かつら)
- 靴
- 手袋
- 日本興産貿易株式会社
- マルシェ・ド・シャポー 東京・浅草橋で年2回開催される帽子の展示会。20名以上の若手帽子作家が出展する。
- 早野凡平 - 帽子を様々な形に変える芸(Chapeaugraphy)で知られる。
- 帽子屋 - 児童文学『不思議の国のアリス』のキャラクター。
- 熱中症
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