今年2月のゆうばりファンタ。国内外で存在感を光らせてきたが… |
国内外の映画ファンから愛されてきた「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭」が存続の危機にある。主催する北海道夕張市が約600億円の負債を抱え、財政再建団体の指定申請表明の影響を受けそうなのだ。
同映画祭は1990年に始まり、今年2月で17回を数えた。真冬のリゾート地に国際的な監督やスターを集め、クエンティン・タランティーノ監督が「キル・ビル」で栗山千明扮する女子高生刺客に「ゴーゴー夕張」と名づけてオマージュを捧げるほど存在感がある。
国の管理下に置かれる夕張で、「ファンタ」は存続できるのか。
映画祭夕張事務局長で、同市観光推進本部長の細川啓二さん(56)は「映画ファンからも心配の声が多くあがっているし、もちろん継続させたい。しかし、今は道が実態調査を行っている最中。現段階では市財政の再建計画がどうなるか…」と将来を楽観できない胸の内を明かす。
同映画祭東京事務局のメンバーで、映画評論家の塩田時敏さん(50)は「竹下政権の『ふるさと創生基金』を受け、当初は1億円の予算で始まった。年々予算は縮小してきたが、逆に内容は充実し、国際的な評価も高まった。財政事情で『やめろ』と国が言うのは当然かもしれないが、映画人としては、やめてどうなる?と考えてしまう」と不安を募らせる。
自主制作映画のコンペティションであるオフシアター部門から、メジャー作品の長編コンペまでを備えた映画祭は国内では他に見あたらない。
タランティーノがゆうばりでグランプリを得た「レザボア・ドッグス」で世界的な大監督になったように、多くの監督がここから世に出てきた意義は大きい。
だが塩田さんは「日本では映画祭の重要度は他国に比べて低い。フランスや韓国などは映画を文化産業としてとらえるのに、せいぜい『町おこし』程度にしか考えられていない」と漏らす。
ファンタの常連で映画監督・脚本家の佐藤佐吉さん(42)は「ホラーの巨匠トビー・フーパー監督と自主映画の学生監督がアイデアを出し合う光景なんて、他の映画祭にはない。私の監督作『東京ゾンビ』だって2人の主演、哀川翔と浅野忠信が夕張で出会ったことが実現のきっかけ。映画業界がこの映画祭の意義に目を向け、映画人が率先して人を動かさないといけない」と話す。
塩田さんは「小さな町の、花も実も情もある映画祭。ぜひ続けていかなければ…」と訴える。
ゆうばりの先輩格「東京国際ファンタスティック映画祭」が今年から休止されるが、小さくとも、北の映画の灯は残したい。
ZAKZAK 2006/07/04