大学進学率をグラフ化してみる(最新)

2018/08/23 04:39

2018-0817義務教育(小中学校)以外の教育機関の教育費の無償化問題や、大学の経営問題など、高等教育のあり方についてさまざまな面で環境の変化が生じ、再検討の機会が与えられている。「よい大学、そしてよい就職先」との子供の進路に関する言い回しも、必ずしも正しいとは言い切れないとの指摘もされるようになった。さらに大学を「就職に有利になるから」との理由で半ば義務教育的なものとして認識し、それを根源として各種の主張をする人もいる。今回はそれらも含め、大学関連の話を語る際には欠かせない、そもそも論としての「大学進学率」をまとめておくことにする。

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今件データの取得元は文部科学省の【学校基本調査】。この発表ページで足りない部分の値については、総務省統計局の【e-Stat】から「学校基本調査」を検索し、「年次統計」「統括表」から「就園率・進学率の推移」や「進学率」から必要な値を取り出して、各種計算を行う。

なおグラフ中にある「過年度高卒者」とは「大学浪人生」を意味する。つまり今件進学率とは、該当学校(大学・短大)入学者数を、3年前の中学校卒業者・中等教育学校前期課程修了者数で割った値である。

まず初めに示すのは、直近値となる2018年度における各種進学率。

↑ 大学などへの進学率(2018年度)(過年度高卒者など含む)
↑ 大学などへの進学率(2018年度)(過年度高卒者など含む)

「大学・短期大学」は大学と短期大学を合わせた進学率。当然それぞれ個々の値よりは高い。大よそは大学へ進学し、短期大学は少数、しかも男性はほとんどが大学進学者で短期大学はごくわずかであることが分かる。他方女性は該当年齢階層の1割近くが短大に進んでいる。

続いて大学・短期大学を合わせた、総合的な大学進学率の推移。今世紀分は別途、数字が分かりやすいように棒グラフを形成する。

↑ 大学・短期大学への進学率(過年度高卒者などを含む)
↑ 大学・短期大学への進学率(過年度高卒者などを含む)

↑ 大学・短期大学への進学率(過年度高卒者などを含む)(2001年度-)
↑ 大学・短期大学への進学率(過年度高卒者などを含む)(2001年度-)

1970年代後半から1980年代半ばにかけて減少傾向が見られる。しかしそれ以外は大よそ上昇傾向にあり、戦後における高等教育・大学志向の高まりが確認できる。一方、この数年間に限りると伸び率が停滞し、むしろ微少ながらも一時的に値が低下したのが目に留まる。これは【若年層の労働・就職状況をグラフ化してみる】などでも解説しているが、金融危機、リーマンショック、空前絶後の円高不況などに伴い、企業にとって即戦力に結びつく高等専門学校への需要が増加しているのが一因のようだ。もっとも2014年度以降は再び増加の流れとなり、景況感に伴い状況に変化が起きている雰囲気が見受けられる。特に女性の進学率向上が目立つ。

これを大学と短期大学に分けてグラフを再構築すると、興味深い傾向が見えてくる。

↑ 短期大学への進学率(過年度高卒者などを含む)
↑ 短期大学への進学率(過年度高卒者などを含む)

↑ 短期大学への進学率(過年度高卒者などを含む)(2001年度-)
↑ 短期大学への進学率(過年度高卒者などを含む)(2001年度-)

↑ 大学への進学率(過年度高卒者などを含む)
↑ 大学への進学率(過年度高卒者などを含む)

↑ 大学への進学率(過年度高卒者などを含む)(2001年度-)
↑ 大学への進学率(過年度高卒者などを含む)(2001年度-)

短大は女性の方が進学率が高い。それに対して男性は低い値でほぼ横ばいを維持。前世紀末からは少しずつ減少すら示している。そして短大で女性の進学率が急上昇し始めた時期と、大学の進学率が上がり始めた時期がほぼ一致している。その後「短大女子進学率は高めで推移」「大学は男性進学率が減少、女性は横ばい」となり、女性の進学欲の向上をうかがわせる動きが見られる。

さらにその後、短大においても女性の進学率は減少し、男女ともに大学への進学率は上昇を続けた。大学への進学率は2010年度あたりからは天井感からか勢いを止めたものの、女性の値は増加を続けているため、全体値も少しずつではあるがさらに上昇は継続中。昨今でも女性の短大進学率減少が続いていることも合わせ、女性の間でも短大から大学への進学先のシフトが起きているものと見受けられる。

また金融危機ぼっ発以降の数年に限ると、大学進学率は減少傾向にあった。上記で記した、さらに【大学卒業後の就職先、「正社員で無くても就職できれば」を肯定する親は1割足らず】などで解説の通り、よい就職先へのアプローチに有効であるはずの「大学卒業」の効力が薄らぐほどの、雇用情勢・就職市場の変化が要因だと考えられる。上記にある高等専門学校生数のように減少しなかった、さらに専修学校生では同時期に限れば減少に歯止めがかかり増加すら見せたのも、一連の流れとして受け止められよう。

↑ 高専・専修学校の在学者数(万人)(2001年度-)
↑ 高専・専修学校の在学者数(万人)(2001年度-)

さらに2014年度以降は、短大への進学率は減少を加速する動きを見せるのに対し、大学進学率は上昇・横ばいに動きを変え、専修学校の在学生数も減少を示している。該当年齢層の人口減少に加え、上記で触れた通り、高等教育機関への進学や就学に係わる環境の変化をうかがわせる動きではある。



現時点で大学進学率は短大進学率も合わせれば5割を超える。今なお就職で有利になる場合もあることを考えれば(【学歴や年齢別の若者労働者の正社員・非正社員割合をグラフ化してみる(2014年)(最新)】【日本の学歴・年代別失業率をグラフ化してみる】)、大学進学率が大きな減少を示すことは考えにくい。

他方、本文でも触れている通り、以前と比べれば「大学進学・卒業」における就職へのオールマイティカードとしての効力は低下している。ごく一部の大学を除けば、大学卒だから就職の際に引く手あまたになるとは限らない。むしろ本人の技能、能力が有力視されるケースも多々ある。さらに、仮に大学卒のラベルで就職できたとしても、本人の実力とかけ離れた認識で採用された場合は、早期の離職も十分考えられる。

他方、高等教育機関の卒業の証が自らを磨き、技術や経験を習得したことをアピールする、第三者に知らしめる有効な手立てには違いない。大学に対する社会全体の見方がどのような変化を示しているのか、今後の動きが気になるところだ。


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