糸魚川ロングブログ

爆速ツイッター話題脊髄反射拳

子供に本を読ませる方法

エクストラステージ

「そんなこと言っても、本を読む子供に育ってほしい」

 

 

ええんか?

ほんまに、ええんか?

 

息抜きに、10歳で、15歳で、20歳で、こういうブログの長文を何時間もかけてドバーッて書くような感じの子供になってもええんか?

もしそうなった時に

「理解できない」「気味が悪い」「どうしてこうなった」

なんて思わないで、

「やるなあ」

って笑顔で頷いてられる親でいられるんか?

その覚悟はあるんか……!!!?

 

以前ツイッターで見かけたけど、フィギュアスケートだったかな。テレビで大きな大会が取り上げられるたびに、それを子供に習わせたいという親御さんはけっこういるそうや。自分の子が羽生君になってくれたら最高やからな。で、コーチに相談に来るらしい。

「うちの子供にフィギュアスケートを習わせてみたいが、果たして続くだろうか……?」と。

でもコーチは

続かなかったらどうしよう、は心配しなくていいです。別の趣味や特技を見つければいいだけですから。でも、お子さんが、予想以上にハマりすぎた時のことを最初に心配してください。才能もあり人一倍努力もでき、五輪を目指せるというのが見えてきてしまったときに、その専門的なトレーニングを子供が『どうしても受けたい』と言った時にどうするか見当をつけてから、門を叩いてください」

みたいにお返事するのだと。

よくわかる。

マイナーで険しい道の習い事や、学問分野っていうのはそっちの方……「できすぎるようになったから、うちの子供が遠く理解できなくなってしまった」「子供が自分に理解できない言葉で喋る」「なんか、かわいくなくなった」「相手にして疲れる」「こんなはずじゃなかったのに」という方での軋轢をよく見てきたなぁ。

つまり「子は親を超えられない、この子は自分がいないと生きて行けない」っていう、弱者に頼られるのが好きというか(教員には堂々と「頼られるのが好き」を志望動機に言う人がたくさんいるぞ)、子供を愛玩動物的に望んだというか、そういう一方的な理想像でスタートした親子関係は「お望み通り、子供が強くなると」軋み出すんやな。

 

「うちの子を、なんとか本読みにしてください!」

「やってみせましょう。契約完了です」

 

で、子供が学力偏差値75ぐらいの「普通じゃない」逸脱者になると

 

「うちの子、気味が悪い……こんなはずじゃなかった」

「お望み通り、お子さんを本読みにしましたよ? クックック……ではこれにて失礼」

 

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天使というのは「何も心配しなくていいのですよ。何も考えなくていいのですよ。神の無限の慈悲は全てをお救いになる……」って「考えなくていいよ」と迫ってくるのですが、決まって悪魔は知恵者という設定なわけです。そして常識を超えた強大な力を授けると同時に、ありがた迷惑で不幸を呼び込む実行者である。これがムラ社会における「悪魔との契約」の本質なのではないか……って、私の妄想ですけど。

 

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子供がスーパー本読みになって、10代前半で親よりもぜんぜん利発になって、ちょっと理解できない遠い存在になってしまっても全然喜べるという方のみ、以下の内容を読むといいぞ!

 

 

  

1、読み聞かせをする

面倒くさいかもしれませんが、まず入り口としてこれの効果は絶大です。

子供は、勝手に字が読めるようにはなりません。勝手に読書が楽しめるようにはなりません。読書を面白いと思う心の基本ソフトは、他者からダウンロードするのが早くて確実です。

小学1年生は算数よりも国語の授業の方がコマ数が遙かに多いのですが、2学期の半ばまで「ひらがな・カタカナ」をずっとやっていたりします。2学期の後半からやっと漢字に入ります。

「あれ? 自分、幼稚園年長でひらがなは読めたぞ?」と思ったあなた、それは親御さんによる何か個人的な手ほどきがあったのでしょう。読み聞かせとか、字の練習とか。一緒に文字が表示されるゲームで遊んでたとか。そういう体験が無かった家庭の子というのは、小1の二学期まで当然にひらがな・カタカナが書けない、読むのもバキバキに肩が凝って大変だというものなのです。

小1入学時点で「先生の音読に合わせて、教科書の文字列が終える子」と「そうでない子」というのは、授業(ほぼイコールで学校)の楽しさ・理解度という面でけっこう差がついてしまいます。

お疲れのところ大変しんどいと思いますが、豪華声優さんになったつもりで、恥を捨てて、ヤケクソで、何度も何度も、読み聞かせには応じてやりましょう。小1~小2は音読の宿題もよく出ますが、それは「楽しい宿題」として「お母さんならこう読むな」「お父さんならこう読むぞ」と付き合ってあげましょう。ここで頑張るだけで、生涯の教育費が数百万円浮くかもしれませんよ。

「ママ、かちかち山読んで~」

「昨日も読んだじゃない」

「読んで読んで読んでええええええええ読んでええええええ」

「……そうね。じゃあママ、普通に読むの飽きちゃったから、今回はボトムズの次回予告(cv銀河万丈)風に読むね。圧倒的、圧倒的火力に、たぬきの背中が燃える

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「ママ、そんなこと書いてないよ……」

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「来週も、たぬきと地獄に付き合ってもらう」

読み聞かせを「教育的に、やらないといけない作業」にするのはもったいない。子供よりも親(自分)が楽しむつもりで、一人劇場をやりましょう。元気にノリノリで発声することはストレス解消にもなりますし、何気に高カロリー技なのでダイエットにもなります。たぶん。

「今日は綺麗な能登麻美子さん風にチャレンジ」

「今日はダークな能登麻美子さん風にチャレンジ」

「今日は美森すずこさん風にチャレンジ。ひどいよぉ~~シルちゃん~~」

「今日は小林ゆうさんのおばあちゃん&コメ粒坊や風にチャレンジ」

「今日は輝夜月ちゃん風にチャレンジ。おやすみおきてえええええ」

七色ボイスで家の中に物語があふれるようにしましょう。テレビでベッ〇ーの不倫反省会見(なぜ人前で反省する必要があるんだ)を口開けながら見てる場合じゃないですよ。「ありがとう」の1セリフで100通りのキャラを演じ分けられるようになったら、あなたはもう子供から慕われるいい親です。「ママー! 綺麗な櫻井さんで『ありがとう』やってー!」「ありがとう」「……今のは実は綺麗じゃない櫻井さんでしょ」

小2の終わりまではとにかく読み聞かせ。

子供は楽しそうにしている大人の真似が大好きなので、そのうち勝手に「読んで遊ぶ」「キャラの声真似して遊ぶ」ようになります。

こう……「小説を読んでいると、キャラの声が自動的に理想の声で再生される人」がいる……というか、私と兄はそうで、みんなそういうものだと思っていたのですが(だから小説の初のアニメ化のときに「原作と声が違う」みたいなことを言う私らオタクがいるのです)、聞こえない人もいるそうです。案外「文字に当たり前に音が付随する」読み聞かせが行われたかどうかが関係あるのかもしれません。黙読時に脳内で音が聞こえている……たとえばお兄さんの声が石田彰さん的な声で再生されているとすれば、それは逆説的に「信用できないお兄さんキャラ」と無意識下で察知しているわけで、ほぼ読解できているのです。国語の勉強は何もしないでも6割は取れる(漢字以外)ってタイプの中高生は、音が聞こえてる勢なのかも。

私は思い返すと、かなり母が音読してくれていました。「こんな子いるかな」シリーズ、「かちかち山」、機関車ピッポーとおばけの山……私の母は怖いシーンを本当に怖く読むのが上手くて「ひぃ!」となっていたものです。

 

2、本を物理的に近くに置く

小3~小4ぐらいとなると、さすがに読み聞かせという歳でもなくなります。

ここが勝負です。

家に本……絵本や小説が全くない状態で、子供がいきなり「ぼく、本読みたい!」と言い出すなんてことは有り得ません。それはジャンヌ・ダルクが村外れで神の声を聞くぐらい奇跡的な出来事です。

だから

「手を伸ばせば届く距離に本があった。だから開いてみた」

という体験を作る、そういう環境を作ることが大事です。孟母三遷は真です。

 

学校も読書には協力的なので、朝読書や読書週間、夏休みの読書課題などが提示されたら、それをきっかけにして「面白そうな本(小説)」を数冊仕入れましょう。一緒に選びに行くのが手っ取り早いですが、そういうきっかけがこない場合は親側から積極的に動く必要があります。

 

まず本は、「今の子供が興味を持ちそうな小説」であること。

俗っぽくていい。系列で言えば「学校の怪談」系とかでいい。

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本はよくわからないから、名作と呼ばれるものを買ってきた……というのは、だいたい空振りに終わります。十五少年漂流記」とか「トム・ソーヤの冒険」とか「ロビン・フッドの冒険」とかは、刺激にあふれた現代の子供にとって、(場所・時代が違うことから)わかりにくく、地味で退屈な内容に映ってしまいます。トム・ソーヤは子供ながらに大冒険をした少年ですが、今の子は日曜朝の仮面ライダーを見て育ってきた子なのです。それらは今や、毎話出てくる怪人をライダーキックで倒すというような一本調子ではありません。高度にSF的な物語のプロットを、たくらみもあり裏切りもありつつバリバリのCGを駆使して戦っている……そういうフィクションで育っているのです。今の子らは。

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だから詳しそうな書店員さんに子供の年齢、性格傾向、学力状況を伝えて、ジャンル違いで3パターンぐらい見繕ってもらうというのがベストでしょう。「~という感じのうちの子を本好きにしたいのだが、おすすめの本を数冊見繕っていただけないだろうか。俗っぽいのでも全然構わないから」と素直に言えば、協力しない本屋さんは絶対にいません。私たち地底人……じゃなくて、本屋の歴戦の店員さんは全ての人類を本好き沼に引き込みたいと考えています。

この段階では、小説にこだわらず世界の偉人漫画とか歴史漫画とかでも十分です。ただそれらは、「親が子に買って与えた、教材」ではいけない。親が子より先駆けて楽しそうに読むことが何よりも大事です。それ系の漫画は、傍でちょっとした解説をする人がいた方がずっと楽しめる。遠い場所・違う時代のお話が内容網羅的(=山場に対するノイズ多め)に漫画化されているわけですから、児童書や少年誌少女誌の漫画よりはキャッチーさで負けるのは当然なのです。子供はすでに漫画経験等があり、心中で比較できる年頃になっているので、偉人漫画や歴史漫画を買って与えた「だけ」では「親が、ツマンナイ漫画買ってきた……センス無い……」と思われるだけ。傍で遠い場所・違う時代に実際に生きた人のお話で「へえー、8人兄弟! 今の日本と違うわねえ」「アメリカの一軒家は大農場がセットなのねえ」とか言いながら「こう見ると面白い」というのを解説してあげましょう。親が子供の心に戻って率先して楽しむのがコツ。

あと、それ系の漫画は肝心なところがササッと大急ぎで感覚的に流される傾向があります。子供達との家庭内不和とか、不倫とか。子供は「なんで結婚してるのに、他の人を好きになっちゃったの?」と、めちゃくちゃ気になっています。そういう疑問に答えるのは偉人伝でも学校の先生でもなくて、傍にいる親の役割です。はぐらかすのはいいことではないですよ。早めに、どの人間にも起こりうる事象として「そういうこともあるのよね~人間って」って教えておいた方がいい。「好き合って結婚してもね、ママもパパも一人の人間だからね、お互い努力しないと恋が冷めちゃったりするのね。恋って努力が大事なのよ。で、人って孤独だから、寂しいと結婚してても他の人に惹かれていくものなの。逆に、好き合っていても結婚しないって関係だってあるのよ……」みたいに。「子供だから知らなくていい」みたいなのは、何の訳にも立ちません。有害な知識? それじゃあ「キュリー夫人」一つ読めませんぜ。と、悪魔は囁いておく。

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荒木飛呂彦先生のアシスタントさんたちが書いた「変人偏屈列伝」より エジソンとテスラ)

子供に賢くなってほしいという願いは、子供をかわいいかわいいペットのような状態から抜け出させ、社会を見つめられる一人の独立した人格にするという覚悟を要します。

 

買って家に置いておく本は、1冊だけというのはやめましょう。

ジャンルが違う本で3冊ぐらい置いて、自分で黙々と読み、子供が手を伸ばすのを待ちましょう。

クリエイティブなお仕事も3案提示して1案選んでもらう、というのがお互い安心できるところです。1案だけだと、話はなかなか前に進みません。

ただ、本を家に持ち帰ったときに「誘導の仕方」はあります。

 「古本屋で安かったから、あんたのために買ってきた。ほら、読みなさい」

なんて絶対に言っちゃダメ。

子供は強制されるのがとにかく嫌いです。

「古本屋で安かったから、買っちゃった。うふふ、私、前から読みたかったのよねえ」

みたいなのが強い。

あんたのために買ったわけじゃない、って明言するのです。

私が私の楽しみのために買ったと言って、目につく所に置いておくのです。

10歳以下の子供というのは自分がプリンスorプリンセスというのを疑っていません。一人っ子なら、家の中では自分が絶対の中心だと確信しているレベルです。

親なんて自分の補助装置・召使いぐらいに思っています。なんだかんだ、泣いて騒げば言うことを聞いてくれる。ちょろい。どれだけ悪いことをしても、最後の最後には絶対に自分の味方になってくれる。なんだかんだ親は僕・私に嫌われたくないのだ……なんせ僕・私は親が辛い現実を生き続ける「生きがい」なのだから……そう確信しています。大人はクレヨンしんちゃんの劇場版を見て「家族っていいなぁ」と思うのですが、子供は冷静に「ひろしもみさえも、結局はしんちゃんを心から愛しているんだ」の部分をこそ学び取とり、自分に当てはめているのです。 

なので

お、おかあさんが……

ぼ、ぼくのことを放っておいて……

「自分のために買ってきた」「本を」「楽しそうに読んでる」んだけど!?

というこの光景は、ショックです。ガツーンと来ます。

長男や長女が弟や妹ができたときに「愛が奪われる」危機を感じて下の子に意地悪をするように、「や、やべえ」って思います。そして本は「なんなんだ、あれは……本というのは……」という興味の対象になります。

しかもそれが江戸川乱歩の「青銅の魔人」だったらどうでしょう。

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完全にヤバそうな、だけどどこか笑いが込み上げてくる表紙です。ひりつくアート。

子供が男児なら、興味を持つなという方が難しい!!

 

買ってきた本に子供が興味がないふりをしても、実際に興味がなくても、全然OKです。

小学生の子供は夜中じゅう家の中を走り回っている猫のようなものなので、そのうち本にぶつかって、本に手を伸ばします。

ぱらぱらとめくっていたら「釣り針に獲物がかかった」って感じで放っておいてください。「あらぁ、本なんてよんで〇〇くんは良い子ね!」なんて言っちゃダメ。子供は褒められたいとは思っていますが、べつに良い子にはなりたくないのです。ウルトラマンでも、怪獣の方を応援するでしょ。仮面ライダーでも癖のあるライバルや敵幹部の怪人を応援したり。だから自分でしばらく読ませた後に

「へえ……あんた、あれ読めるんだ。……思ってたより、やるわね」

って、本気で驚き感心している顔をしてボソッと言う。

はい勝利。もう、脇目も振らず読みまくりますよ。で、勝手にはまっていきます。

……たまに現場のプロにもいてしまうのが悩みの種ですが「あらぁボクぅ、良い子ね~」という褒め方は子供をキレさせる全ての要素が入っています。「子供扱い」と、「良い子」ですね。例えば注射で泣かなかった男児に「あらぁボクぅ良い子ね~」と言うか「あら、強い。あんた、大したものね」と言うか、それだけで子供からの気に入られ方は天と地です。

もし買ってきた本について「……これさ、何が面白いの?」なんて子供が聞いて来たら、それはそれでよし。

それがどうして、いかにおもしろいか、楽しみ方や面白みを解説してやりましょう。

冒険者たち(ガンバの冒険)」だったら「イカサマがかっこすぎるでしょ……イカサマはお母さんの初恋の人なのよ……(初めて描いた同人誌はイカサマ中心オールキャラ本だったわ……)」

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イカサマ……? ネズミじゃん!?」

「わかってないわね。ネズミだけど、誰よりも男気があるわ」

「そうかな……僕はイタチのノロイの方が好きだな。強いし」

ノロイも敵ながらかっこいいわよねえ。でもその圧倒的“暴”をガンバたちが知恵と勇気で克服していくところにロマンがあるわよねえ。オイボレが実は凄いキャラだったっていうのも……」

 

親と、本の話題だったら、仲良くできる

 

ゲームはやりすぎると怒られるけど

本はどれだけ読んでも嫌な顔をされない

むしろ話題的に盛り上がっていく

 

そういう「読書という娯楽」に対する「安心感」を絶対のものとしましょう。

だから「あんた、本ばっかり読んで……ちょっとは外で遊んだら?」とか、ダメ。

なんだ、結局ゲームと同じで、親によって限度が設けられてて、それを超えるとお小言を言われる娯楽なんだ、と思われたら台無しに近いです。

本屋に連れて行って「これ読みたい」と言ったものを、恩着せがましくなくスッと買ってあげましょう。角川つばさ文庫とか。青い鳥文庫とか。若おかみは小学生。最近は小学生も大変だな。しかし子供は飽きっぽいので、表紙に引かれて買ったものの途中で放り出すことがよくあります。その時「お前はどうせ最後まで読まないから、次のは買ってやらん!」なんてしちゃダメ。道理的にはそう言いたくなるものですが、「前のはまだちょっと難しかったか……ま、じゃあ次のに行こう。でも来年また読んでみるといいぞ。お父さんはあれ面白かったからな。たぶん〇年生になったら面白く感じるだろう」って感じに。

とにかく、読書を「課題」や「罰」にしてはいけません。

今のを読み終えない限り、次のは買ってやらん!」と言ったが最後、へそを曲げて「じゃあもう、次のもいらない」と食いついてこないのが子供です。とにかくいっぱい触れさせて、その中からお気に入りシリーズが一つ出てきたならOKという心構えでいきましょう。お気に入りシリーズは「こわいもの係」かもしれないし「若おかみは小学生!」かもしれないし「逆転裁判」かもしれない。「シートン動物記」かもしれないし「少年探偵団」か「ハリー・ポッター」かもしれない。

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1シリーズにでもはまれば、もう本が疎遠となるルートは無くなります。いったん離れても、必ず人生のどこかで帰ってこられます。

ほいほい本を買ってあげるというのは、行うべき投資です。それを許すか許さないかで、生涯の学費や塾代が数百万円以上変わると思えば、全然安いでしょう。

 

3、親が読んでいる姿を見せる

子供というのは、「口だけの大人」が大嫌いです。

もし子供に嫌われたいという親がいるのなら、その方法は簡単。

・自分にはできないことを、子供に子供の義務としてやらせる、やれて当然だ、なぜできないのだと叱る

これで一発で嫌われることができます。

上司が部下に嫌われるのも大体このパターンですよね。

 さらに子供に見限られるレベルまで行く方法もあって

・自分にはできないことを、子供に子供の義務としてやらせる、やれて当然だ、なぜできないのだと叱る。自分はできるとバレバレの嘘をつく。自分は若い頃はできたとバレバレの嘘をつく

これでもう、すっごい冷めた目で見られるようになります。惨めだもの。

……

「中学生は反抗期」なんて言葉がありますが、あれって、だいたい「全知全能と認識させてきた親像が、勉強が難しくなるにつれて崩壊し、そのフォローを嘘をついたり苦しい言い訳をしたりしてミスって見限られ始めた」っていうだけだったり。

「中学生の定期テストは甘くないんだから! 勉強しなさい!」

「仕方ない、するかぁ……。ねえ、この数学の文章題教えてよ」

「あ、こ、これね~。これはまあ、簡単ね……え、えーと、えーと……」

「(……あれ? その前段階もわかってない?)」

「あーいけない、ど忘れしちゃった。あんたももう中学生なんだから一人で教科書読んでやりなさい! 私は中学時代、90点以下なんて取ったことないんだからね! 県トップ高にも余裕で行けたんだけど、家から近い高校に行っただけなんだから!」

「……(うちの親、寒ぃ)」

 

反 抗 期 突 入

 

まあ、叱り飛ばしてくる上司が、自分未満の能力しかない、それをバレバレの嘘ついて隠したまま叱り飛ばしてくるっていう構造に、苛立ちややるせなさを感じない部下の方が少ないでしょう。そして中学では親が取り繕えないキラーコンテンツ「英語」の本格登場により、この問題は表面化していくのです……

いや、最初から「あたし昔から勉強苦手だったからねー。もう無理。あんたよくついていけるねえ、すごいわー」ぐらいフランクな関係だったら大丈夫なのですけど。

「反抗期」なんていう子供側に瑕疵があるかのような命名より、 「子にとって無敵のヒーローでありたかった親の、理想と現実の危機」みたいな名前をつけたいですね。

 

前置きが長くなった。

何にでも言えることですが

「本を読めと親は言う。だが親が本を読んでいる姿を見たことがない。俺が居間で宿題をしているその時、ベッ〇ーの不倫謝罪会見を口を開けながら観てた」

 という状況では、子供にとって読書も勉強も「なんで私だけ……」です。

子供を本読みにしたかったら、親が黙々と、しっとりと、本を読んでいる背中を見せるのが必要不可欠です。

これはタブーに触れるかもしれないけど……

中学生以上の子供になぜ個室を与えるか、ですよね。個室問題。

プライバシーが~とかはもちろんなのですが、ぶっちゃけ、大抵の家が、「中学となると通知表も大事だから、子供には勉強して欲しい。だけど私はテレビを観たい」。

その本音と建て前に「プライバシーが~」と言っているだけで、「私はテレビを観たいから、子供には個室で集中して勉強してもらう」という構図を譲れないで、子供を個室に押し込め勉強しろと言い、子供は個室で延々とネット動画・LINE・モン〇ト・パズ〇ラをやっていて崩壊していくという……

我が子をどれだけ信じたって、隙があるなら人は簡単に不正に染まります。チョロイって程度に思われてます。

個室は与えてもいいのですが、「勉強するときは居間で。スマホは預けて」の約束はあった方がいいです。塾に100万円以上ぶっぱなしたくないなら中1の最初にそういうルールを作りましょう。

で、子が居間で宿題なりテスト勉強してるなりの時は、親もテレビは我慢して、静かに子の視界の隅に背中が映るように本を読みましょう。子供の勉強見てあげる必要なんてないです。そんなの過保護だし、難しいから普通の親は見てもわかりません。でも「あたしもテレビを我慢して、頑張って本を読むから」なんて言っちゃダメ。そんなの恩着せがましいし、まるで読書を苦行のように言っている。あくまで能動的に黙々と静かに本を読んで癒されている姿を見せるのが大事です。「う゛、う゛えええぇぇあたし本読むの苦手だよ~楽しんで読むなんて無理だよぉ~」という親御さんには、まずは故さくらももこ先生のエッセイをオススメします。めちゃくちゃ面白いですよ。

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子が勉強しているときは親も仕事のテキストを開いて勉強しておく……というも効果はあるのですが、「うちの親、たしかにしっとり楽しそうに本を読んでるな」という印象づけの方が優先的に思います。勉強が終わったら、子供は個室に引っ込んじゃう可能性高いですからね。もちろん、小学生の頃から「居間で、子は勉強、親は静かに読書」というのは効果的ですよ。一つの同じ宇宙船に乗っている仕事人的な信頼関係が生まれます。

 

4、どんな本を読ませればいい?

まず親は、読書に高尚や低俗という考え方があることを捨てて下さい。

本人が楽しく文字の羅列を読んでいる、それだけで内容がなんであろうと喜びましょう。ライトノベルなんか読んでるから心配だ、もっと世界の名作文学や日本の文豪の作品を読んで欲しい……というのは大人のエゴ100%です。

世界の名作文学が書かれた時代にはスマートフォンもユーチューブもなく、バーチャルユーチューバー輝夜月も月ノ美兎もいません。昔の時代の子供と今の時代の子供が興味を持つ内容が違うのは、環境的に言って必然です。

 

・子供が小2~4

小学校はさすがにスマホ持ち込みOKではありません。すぐ盗難が起きるので。つまり、未だに電子書籍=漫画類持ち込み不可な聖域なのです。

だからこそ「学校に持って行ける漫画的なもの」としての小説に、子供は魅力を感じます。

この現状をわかりきった上で特化させてる恐ろしいレーベルが、角川つばさ文庫です。特に女子に人気です。「なんやこれ、漫画やん!? こんなんいい効果あるんかいな……」と思った親御さんは、中を読んでみてください。普通に、中高生向けのライトノベルより使用されている語彙(ことわざとか故事成語とか比喩とか)は広く、行間も読まされます……ふりがなは打ってあるけど、さりげないエリート教育ですよこれは……

男子向けの読み物が不足してるのがちょっと残念な現状。アニメ化されている作品の原作や、漫画のノベライズなどがおすすめしやすいでしょう。ただ、男の子は「(かっこいいと思ったものなら)テンプレ以外のものにもハマる」傾向があるので、「シートン動物記」のやたらと無慈悲でクールな世界観や、「少年探偵団」ぐらいの怪奇&推理小説とかがいいのかもしれません。

 

・子供が小5後半~中1

子供側から、いかにも子供っぽい表紙のものは避けるようになる可能性があります。楽しく角川つばさを読み続ける子もいるけど。読んでいいんですよ。大学生以上向けのビブリアとかがレーベル内にあるぐらいですから。本人の気持ちの問題です。

で、もし子供が「次」を望むのなら……

女子ならメディアワークス文庫、新潮NEX、冨士見L辺りの沼にズボォッっとハマる可能性が高いです。近隣領域として角川文庫(角川スニーカー文庫ではない)も強い。アニメ化もされましたが「古典部シリーズ」「ハルチカシリーズ」は角川文庫ですし(原作はアニメよりもやや硬派です)、この前映画になった「ペンギン・ハイウェイ」だって角川文庫です(角川つばさ文庫でも出ています)。角川文庫の「万能鑑定士Q」シリーズもハマる子は大変多い。安牌というか当たり牌です。すごい子は京極堂シリーズにハマる。

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男子ならエロいものに対する嫌悪と興味がつりあってくる頃なので、「君の名は。」のスピンオフ小説とかを渡しましょう。本心ではJKが主人公の話を読みたがっている小~中学生男子は星の数ほどいます。

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このスピンオフ小説では、三葉の体になった瀧くんが、自分についてるおっぱいを揉んだときの「……これは……意外と……」からの素直な戸惑いと驚きの感想が、詳細に語られています。もう勝ちです。以後なんだかんだ理由をつけて小説を買ってほしいとせがむようになるでしょう(ぶん投げ)

 

男女ともにあまりおすすめしないのは、重松清先生の小説です(塾の先生はすすめる人が多いのですが)。重松先生の小説は中学入試の小説問題に延々と出続ける鉄板ですが、あれは「大人が見たい、子供の理想の姿」「大人が子供に読ませたいと思う、子供の話」に特化した小説で、生身の子供が読んで面白いと思う可能性は低いです。むしろ、自分たちが俯瞰されつつ未熟さをヨシヨシと愛でられているような、「本ってなんか、微妙だなぁ」「こんな小学生いねー」という感じになるでしょう。重松先生の本は、大人が読むととても楽しいのだけど。それよりは、小学生というのは中学生以上が主人公の、一つ上の思考を摂取したがっているものです。

 

・子供が中学~高校

小学生のときに本読み的な嗜好になっている子なら、放っておいてかまいません。勝手に、学校の図書室や本屋で興味を広げて行きます。

そうでなく「中学から本読みにさせたい」場合は、中学生にとって興味のある本をトスする必要があります。「お前は読書癖が無いんだから、小学生が読むものから読め!」みたいなのは間違い、絶対にダメ。それは多感な年頃の子に屈辱ですし面倒です。

 

女子の場合……若干オタク的なフィクション許容力があるのなら、前述のメディアワークス文庫・新潮NEX・冨士見L・角川文庫辺りの沼にズボォッとハマれる可能性があります。そうでなく実に健全に育ってきているのなら、住野よる先生の「君の膵臓を食べたい」「また、同じ夢を見ていた」など「泣ける!」……綺麗な涙を出させるために全力特化した本たちが強いです。メディアワークス文庫の「君僕系」と呼ばれるタイプの本もこの系譜です(タイトルに超高確率で「君」と「僕」が入ってることから、君僕系という俗称でカテゴライズされるようになりました)。ドラマチックで、運命的な、少しの苦さと澄み切った綺麗な涙が出る話に自身を投影してハマれます。

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男子の場合……ド健全な男子なら住野よる先生の作品でもいいのですが、大抵の男子はド健全ではないので、「デスゲームもの」や「異能力バトル・ロボットバトル」や「ちょいエロいやつ」の引力に真っ逆さまに落ちていきます。上3つを全て満たしている作品も、ライトノベルにはいっぱいありますね。今の子は運動部だろうと深夜アニメの話題に通じているのが普通なので、アニメとして話題になっているライトノベルは、グッズ感覚でもいいから買ってあげるとよいでしょう。けっこう最終防衛ライン、勝負どころです。スマホと個室を手にした子供は、暇のつぶし方を「部屋の中にある物の中から考える」ようになります。スマホで無料ゲームをダウンロードし続けたり、面白い動画を検索したりです。エロいものだってネットで無限に手に入るので、「エロ動画やゲームより、本を読む方が楽しいや」と上回らせる、小学生の頃よりも高いハードルを超えなければなりません。

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5、新書はどうなの?

でも小説なんて架空のお話でしょ? うちはもっと実用的な……大人も読んでいる新書を読ませるわ! そうすれば2倍3倍賢くなるはず!

「決断力」「鈍感力」「捨てる勇気」「バカの壁」「サラリーマンは年収300万で家を買え」「捨てる勇気」「PDCAサイクル」!

うぐ、うぐぐぐ……

あれらは、かなり玉石混淆です。

もちろん面白い内容のものはありますが、中には感情論フルバースト、ちゃんとした論のお手本としてしまったら後遺症を残すようなものもあります。案外、ネットで普通に言われている程度のことが超もったいぶった文体やインモラルな例でどや、どや!と書かれているだけのものすらあります。

だから子供が読みたいと言ったら全然読ませていいと思うのですが、それを「小説以上の進んだもの」として読ませて、妙なプライドをつけさせてしまうことはおすすめしません。不思議な感じですが、架空の物語にすぎない小説の方こそいろいろな物を抽出できる超高密度の物体かなとは思います。

例えばサラリーマン道を熱く語った新書よりは、「壬生義士伝」の上下巻にのめり込んだ方が、「サラリーマンの人生」ってものが実感としてわかると思う。あれは新撰組のお話ですが、その実サラリーマンお父さん小説の大傑作です。だからあくまで新書は子供に希望があれば導入するぐらいのオプションで、親が小説を排してまで率先して渡す物のようには思いません。

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 壬生義士伝マジ最高。「お金にこだわるのが最もみっともない時代に、方言丸出しでお金にこだわる、『脱藩者』にして新撰組吉村貫一郎。普段は穏やか、だがあまりにもみっともない彼の姿は、他の血の気の多い新撰組隊員を激怒させる。が、穏やかで田舎者のその技の冴えは……そして彼がみっともなく銭にこだわる理由とは……」最の高。

 

 

そんなところ。以上、まとめますと

1、読み聞かせをする

2、本を物理的に近くに置く

3、親が本を読んでいる姿を見せる

4、本に低俗も高尚もない。年相応に読みたいといったものを与える

5、新書は小説の“上”とは限らない

 という感じでした。

 

一つ前の記事にも書きましたが、とにかく絶対忘れちゃいけないのは

「子どもを本好きにしたいのなら、子どもが本嫌いになる可能性がある行為をとことん避ける」

という点です。攻めの姿勢よりも守りの姿勢が大事。

本は、元よりフリークがたくさんいるほどに「そもそも面白いもの」なのです。

こっちだって、面白く読んでもらえるようにって、工夫して頑張って書いてるし。

だから年齢経過と共にどこかのタイミングで「自然と好きになる」可能性は常にあります。

今回の記事は「そのきっかけを、少し誘導してみよう」みたいなものです。

本人がさっぱり興味を持っていないもの、レベルにあっていないもの、そもそも親がその本を楽しいと思えていないもの、そういうのを強制して与えるようでは、確実に「本嫌い」になります。「その本を読み終えない限りはゲームを買ってあげないぞ」とか、「お前は本を読まないからダメなんだ」とか「お前は本さえ読めばなあ」みたいなお小言もNG。本に対する敵愾心しか生まれません。

子どもが学校の授業で、図書室で本を借りてきたとしたら「へえ……私もそれ、読んでいい?」ぐらい言う。で、実際読んでしまう。そして子どもが読み終わったら感想を言い合う。子どもが月に3冊も読んだら「すごいねえ。大人でもそんな読まないもんよ」と褒めて自信をつけさせる。そんな風に、上から下に与える「啓蒙行為」ではなく、家の中に当然に存在する娯楽の1つとして本を扱うと、本好きな子どもは増えるのではないでしょうか。本に限ったことでもないかもしれない。

 

以上です。

悪魔はクールに去るぜ

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画像はロード・オブ・ヴァーミリオンⅢの悪魔、バフォメットだぜ

 

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