安倍晋三元首相が奈良市で街頭演説中に銃撃され死亡した事件で、元海上自衛隊員の無職山上徹也容疑者(41)が、恨みを抱いていたとされる特定の宗教団体について「(海外から日本に)招き入れたのが岸信介元首相。だから安倍氏を殺した」と話していることが11日、捜査関係者への取材で分かった。奈良県警は容疑者がインターネット上などの不確実な情報を信じ込み、岸元首相への反感を孫の安倍氏に向けたとみて調べる。

捜査関係者によると、容疑者が「母親が宗教団体に入信し、家庭が崩壊した」と話していたことも判明。「団体と安倍氏がつながっていると思ったから狙った」と説明していることも分かっている。

宗教団体は海外発祥だが国内にも多くの信者がおり、定着している。保守的な思想が特徴で、国内外の政治家と関係を構築してきた。岸元首相は関連する政治団体の設立に携わったとされ、安倍氏も2021年、別の関連団体のイベントにメッセージを寄せているが、岸元首相が宗教団体を日本に招き入れたとの根拠は不明で、実際には海外の信者が伝道活動に当たったとされている。

容疑者は「自分で作った銃を(事件前日の)7日未明に宗教団体の関連施設で試し撃ちした」と説明。県警によると、同じ時間帯の施設近くの防犯カメラには、容疑者のものとみられる軽乗用車が通行する様子が写っていた。

◆岸信介元首相 安倍晋三元首相からみて母方の祖父に当たる。1896年に山口県で生まれ、1941年に東条英機内閣で閣僚に就任した。第2次世界大戦後はA級戦犯容疑で逮捕されたが起訴は免れた。57年2月に岸内閣を発足させ、60年には日米安全保障条約を改定。成立後の同年7月に総辞職した。同年には首相官邸レセプション会場でももを刺され重傷を負った。87年に90歳で死去。

(共同)